【美容室開業】将来は複数の店を持ち、多店舗経営したい？なぜ？

多店舗展開していいきたいと思う！この動機は一体何ででしょうか？

美容室開業、理容室開業の希望者の方々から最初に相談を受ける際によく聞く声があります。

「私は、いずれは多店舗展開し、いずれは経営を拡大して２～３件のお店を持ちたいんです！」

ここで、毎回お尋ねする質問があります。

「なぜ多店舗展開をしたいとお考えなのでしょうか？」

どういうわけか、この質問に対しての返答は、意外と即座には返ってこない傾向があります。

それでも、お互いのお話し合いの中で、一緒に追求していくと、こんなところに行き着く事例が少なくありません。

「単純に、１件だけのお店運営では、何だか経営者としてスケールが小さい気がするし、やがては複数の店舗を運営してこそ、有能なオーナーである気がするんです。目指すなら目標は大きく、と思いまして・・・」

まぁ、正直なところ、漠然としているといいますか、曖昧な理由であることがほとんどです。

開業、出店、開業後の経営面での相談事の中で、すでに多店舗展開している美容師さんや理容師さんとお話する機会も時折ありますが、その際、実際の多店舗経営の実態やオーナーさん自身が持つ本音を聞かせてもらうことがあります。

シンプルに「多店舗展開の経営、いかがですか？」という質問に対し、本心から語られるオーナーの言葉は、くっきり２極に分かれます。

多店舗展開している現状に大きなやりがいを感じ、非常に充実し満足している

そして、もう一つ、多店舗展開なんかしなければ良かったと若干後悔している

軽いお天気会話であれば、1つ目の「綺麗事」とも取れるような言葉を発する人も多いのかも知れませんが、

実際のところ、本当のところはいかがなの？話も深まって、腹を割って本音を言ってもらうと、実は2つ目のほうが意外にも多いのです。

多店舗展開という現状に満足していると語るオーナーの場合は、

1店舗目は、毎日沢山のお客から予約が入るようになり経営は軌道に乗り非常に好調だった。しかし、この店だけでは対応しきれないほど客が増え予約が受けきれずお断りせざるを得ないような状況も増えた。客からの希望が多いのに対応できるキャパがとにかく足りない。その為、より多くの客に対応できるよう、リクエストに応えるため店舗拡大すべきと判断し２号店を出店した。もちろん、姉妹店となるこの2号店を増やしたことにより、また、育った従業員もいるので、今まで以上に客を受け入れ、対応能力がアップし、結果的には

今まで以上に報酬も増え、店を好んで喜んでくれる客も増大させることができた。

これ、メチャクチャ、ハッピーな展開ですよね。多店舗展開の理想ともいえるのがこのパターンです。

一方、多店舗展開に満足していないオーナーの場合は、こんな経緯から複数の店舗を持つことにしたと言います。

大変な思いで開業した１店舗目、ところが、なかなか売上が上がらず、自分自身の報酬も満足に得られず、常に悩んでいたと言います。店の席数が限られているので客の受け入れをどんなに多く詰め込んだとしても・・・それでも自身の収益が満足に得られない。ならば、もう１店舗出店すれば２店舗それぞれからの収益に増やせると考え、苦しい中から脱出を賭け、さらに借金をし、意を決して２号店を出店した。もちろん２店舗分となったことにより、以前より少なからず自分の収益は増やすことはできたものの・・・代償として、２店舗分の運営で、忙しさは倍増し、今まで以上に労力や神経をすり減らす結果に陥った。確かに、お金はそれなりに得られるようになったものの、管理すべき諸業務は１店舗目の頃より明らかに倍以上となり、代償として健康面の不安が生まれた。

何よりも辛いのは、自分の自由時間が全然なくなってしまったこと。

さらに、こんな本音も・・・

こうなりたくてなったのではない。その時は、それしか方法が見つからなかった・・・

というのです。しかし、一度２店舗、３店舗と拡大すると、やがて経営が苦しくなった際、店舗縮小や複数の店舗の中から退店させるような整理には、出店時のときより、想像できないほど辛く、大変なのです。

１店舗より２店舗、３店舗のお店を抱える多角経営者は確かに、一見外から見れば、非常に優秀でやり手と賞賛されるかもしれません。しかし、これは外からの印象だけの話。開業者本人の成功基準とは異なるのです。もちろん開業時点で、志を高く、経営者として成功し、いつかは多店舗展開しつつ、事業拡大を目標にするのは悪いことではありません。

しかし、最初の段階から「なぜ？」多店舗展開が必要なのか？これを今一度考えてみるべきです。

特に最初の独立開業の際、私が相談者へ、しつこいぐらいに重要だとアドバイスしているのが

開業時の「動機」

お店を出店する際、最初の目標とすべきは、

現状では割に合わない安い報酬を、開業後には格段にアップさせること。

現状の超多忙な状況から脱出し、ゆとりを得られるような時間の確保。

この「お金と時間」２つの獲得が最大の理想要素なのです。

しかし、多店舗展開への夢は、単純に複数のお店を切り盛りしている経営者の姿としての憧れであるなら、多店舗経営は決しておすすめはできません。

多店舗展開はたしかに報酬アップは実現できても、代償として時間を無くすことに繋がる可能性、いや危険性を大いに併せ持っているからです。

私が開業サポートとして関与した美容室、理容室開業実例の中で１０年以上、いや、すでに２０年の運営を実現している美容室、理容室も存在します。

過去に出会った開業オーナーさんの６〜７割は、最初に会った時「多店舗展開をしたい」という漠然として目標を宣言するものです。しかし、そんなことを発していた沢山のオーナーさんの中でも、実際に２号店以降の多店舗展開を実現させたお店は、実はほんのわずか数件なのです。

その理由は前述したとおりです。

独立開業時の動機が「報酬と時間」の獲得であったから。

実際、目標通り、この２要素が１店舗だけで得られているからなのです。

多店舗展開してしまうと、このバランスが簡単に崩れる危険性があることを、誰もが理解するからこそ、1店舗のみで健全運営のままなのです。

このように「開業時の動機」が核となります。

過去に開業し健全な経営を続けている歴代の開業者さんたちですが、皆共通で成功し報酬も満足できるほどに獲得できています。同時に、家族と一緒に過ごす時間や、自らのさらなる勉強の時間など、経営しながらも自由な時間も同時にの獲得もしているのです。開業後、何年も経過し折りに触れお話する機会を得た時、現在の状況がとても豊かであること、同時に「飯島さんから多店舗展開の考え方を変えてもらえて良かった」と話してくれます。

世の中の開業者さんの多くは、

なぜ多店舗展開をしたいと考えるのか？

なぜ多店舗展開をする必要があるのか？

ココ、冷静に、真剣に、今一度、考えてみてはいかがでしょう。

• 開業者の多くは最初は漠然とした多店舗展開の目標を抱きがちで、憧れとして捉えている場合が多い。
• 実際の多店舗経営者の本音は、幸せな人と苦悩する人の2極に分かれる。複数の店を持っていても必ずしも成功者とはいえない。
• 「客の為」に事業拡大した人は豊かになっている事例が多く、「自身の欲求の為」に拡大した人は相変わらず苦悩している傾向ある。
• 多店舗展開も、開業時同様に確固たる「動機」が重要で報酬と時間の両方を獲得することにこだわるべき。